【債権法改正メモ】民法412条の2の挿入

改正点:

  • 履行不能とはどのような場合を指すかが明文化された(1項)
  • 履行不能の場合に債権者が債務の履行を請求することができない旨が明文化された(1項)
  • 原始的不能の場合であっても履行不能を理由に民法415条に基づき債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができる旨が規定された(2項)

【現】

規定なし

【新】

(履行不能)

第四百十二条の二 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

2 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

【債権法改正メモ】民法412条2項の改正

改正点:

不確定期限がある場合に債務者が遅滞の責任を負う時点について「その期限の到来したことを知った時から」としていたのを「その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から」に改めた。

【現】

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

【新】

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

【債権法改正メモ】(現)522条の削除

改正点:

【現】

(承諾の通知の延着)

第五百二十二条 前条第一項の申込みに対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。

【新】

(契約の成立と方式)

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

【関連情報】

隔地者間の契約の成立時期に関する(現)526条1項(承諾の意思表示の効力発生時期に関する発信主義を採用)が削除されたことによって承諾の意思表示の効力発生時期についても民97条1項が適用される。

したがって,(現)524条が想定していたような状況(承諾が発信され(現)526条1項に基づき契約が成立したが,これが承諾期間内に申込者の元に到達しなかったために(現)526条2項に基づき申込みの意思表示が効力を失うという状況)は起こらないことから,(現)522条が削除された。

【債権法改正メモ】諾成契約を原則とする旨の規定を新設・方式の自由の原則を明文化

改正点:

  • 522条1項に,諾成契約を原則とする旨の規定を新設
  • 522条2項に,方式の自由の原則を明文化する規定を新設

【現】

規定なし

(現522条は「承諾の通知の延着」について規定)

【新】

(契約の成立と方式)

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

【関連情報】

現522条は削除された。

【債権法改正メモ】契約の締結及び内容の自由を明文化

改正点:

契約の締結及び内容の自由を明文化する規定を521条に新設

【現】

規定なし

(現521条は承諾期間の定めのある申込みについて規定)

【新】

(契約の締結及び内容の自由)

第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。

2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

【関連情報】

現521条は,新523条に移動

【債権法改正メモ】521条の改正

改正点:

  • (現)521条に規定されていた内容が(改)523条に規定された。
  • (現)521条1項の文言が一部修正された。
  • (改)523条1項ただし書が追加された。

【現】

(承諾の期間の定めのある申込み)

第五百二十一条 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

【新】

(承諾の期間の定めのある申込み)

第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

【債権法改正メモ】120条1項・2項の改正

改正点:

  • 120条1項;取消権者に,他の制限行為能力者の法定代理人として制限行為能力者が行為した場合には,当該他の制限行為能力者が含まれる旨が括弧書きで挿入された。
  • 120条2項;取り消すことができる行為に錯誤が追加された。

【現】

(取消権者)

第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

【新】

(取消権者)

第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

【関連情報】

95条が改正され,錯誤が取り消すことができる行為とされている。

【債権法改正メモ】117条1項・2項の改正

改正点:

  • 117条1項;「…自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったとき」が,「自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。」に改められた。
  • 117条2項;117条1項が適用されない場合を各号で列挙した。

【現】

(無権代理人の責任)

第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

【新】

(無権代理人の責任)

第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。

二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。

三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

【附則(平成二十九年法律第四十四号)】

(代理に関する経過措置)

第七条 施行日前に代理権の発生原因が生じた場合(代理権授与の表示がされた場合を含む。)におけるその代理については、附則第三条に規定するもののほか、なお従前の例による。

2 施行日前に無権代理人が代理人として行為をした場合におけるその無権代理人の責任については、新法第百十七条(新法第百十八条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。

【関連;118条(改正なし)】

(単独行為の無権代理)

第百十八条 単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも、同様とする。

【債権法改正メモ】112条1項の改正・同2項の新設

改正点:

  • 112条1項;表現が改められた。
  • 112条2項;代理権消滅後に権限踰越型の代理行為があった場合に関する規定が新設された。

【現】

(代理権消滅後の表見代理)

第百十二条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

2項;規定なし

【新】

(代理権消滅後の表見代理等)

第百十二条 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

2 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

【附則(平成二十九年法律第四十四号)】
(代理に関する経過措置)
第七条 施行日前に代理権の発生原因が生じた場合(代理権授与の表示がされた場合を含む。)におけるその代理については、附則第三条に規定するもののほか、なお従前の例による。
2 施行日前に無権代理人が代理人として行為をした場合におけるその無権代理人の責任については、新法第百十七条(新法第百十八条において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。

【債権法改正メモ】110条の改正

改正点:

109条2項が新設されたことに伴い,文言が改められた。

【現】

(権限外の行為の表見代理)

第百十条 前条本文の規定は代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

【新】

(権限外の行為の表見代理)

第百十条 前条第一項本文の規定は代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。