【債権法改正メモ】122条ただし書の削除

改正点:

(現)122条ただし書が削除された

【現】

(取り消すことができる行為の追認)

第百二十二条 取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

【新】

(取り消すことができる行為の追認)

第百二十二条 取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。

【関連情報】

(現)民法122条ただし書について以下のような指摘がされていた1

 取り消すことができる行為が追認されると,以後,行為は完全に有効なものとして確定する。かつて122条本文は,追認によって「初ヨリ有効ナリシモノト看做ス」とされていたが,もともと一応は有効なものであるからミス・リーディングな表現であり,現代語化によって「以後,取り消すことができない」と改められた。しかし,現在も残る但書の「追認によって第三者の権利を害することはできない」の意味は,必ずしも明らかでない。従前も有効であったものが〔追認によって〕有効に確定しただけであり,追認があったから第三者の権利が特別に害されるという事態は想定しがたい。

また,民法122条ただし書削除に関する提案についての説明は以下のとおりである2

民法第122条ただし書は,取り消すことができる法律行為の追認によって第三者の権利を害することはできないと規定している。しかし,追認は,不確定ではあるものの有効と扱われている法律行為を確定的に有効とするに過ぎず,第三者の権 利を害することはないから,同条ただし書は不要な規定であると考えられている。 そこで,本文は,同条ただし書の規定を削除することを提案している。


  1. 河上正二『民法総則講義』(日本評論社・2007年)427頁。
  2. 民法(債権関係)部会資料29・47頁。

【債権法改正メモ】121条ただし書の削除

改正点:

(現)121条ただし書が削除された。

【現】

(取消しの効果)

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

【新】

(取消しの効果)

第百二十一条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。

【関連情報】

121条の2(新設規定)1項が「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は,相手方に対して原状に復させる義務を負う」と規定しており,同条3項が,「第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。」としている。

【債権法改正メモ】121条の2の新設

改正点:

無効の効果としての当事者の相手方に対する原状回復義務に関する規定が新設された。

【現】

規定なし。

【新】

(原状回復の義務)

第百二十一条の二 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。

2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。

【債権法改正メモ】民法412条の2の挿入

改正点:

  • 履行不能とはどのような場合を指すかが明文化された(1項)
  • 履行不能の場合に債権者が債務の履行を請求することができない旨が明文化された(1項)
  • 原始的不能の場合であっても履行不能を理由に民法415条に基づき債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができる旨が規定された(2項)

【現】

規定なし

【新】

(履行不能)

第四百十二条の二 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

2 契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第四百十五条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

【債権法改正メモ】民法412条2項の改正

改正点:

不確定期限がある場合に債務者が遅滞の責任を負う時点について「その期限の到来したことを知った時から」としていたのを「その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から」に改めた。

【現】

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

【新】

(履行期と履行遅滞)

第四百十二条 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。

3 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

【債権法改正メモ】(現)522条の削除

改正点:

【現】

(承諾の通知の延着)

第五百二十二条 前条第一項の申込みに対する承諾の通知が同項の期間の経過後に到達した場合であっても、通常の場合にはその期間内に到達すべき時に発送したものであることを知ることができるときは、申込者は、遅滞なく、相手方に対してその延着の通知を発しなければならない。ただし、その到達前に遅延の通知を発したときは、この限りでない。

【新】

(契約の成立と方式)

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

【関連情報】

隔地者間の契約の成立時期に関する(現)526条1項(承諾の意思表示の効力発生時期に関する発信主義を採用)が削除されたことによって承諾の意思表示の効力発生時期についても民97条1項が適用される。

したがって,(現)524条が想定していたような状況(承諾が発信され(現)526条1項に基づき契約が成立したが,これが承諾期間内に申込者の元に到達しなかったために(現)526条2項に基づき申込みの意思表示が効力を失うという状況)は起こらないことから,(現)522条が削除された。

【債権法改正メモ】諾成契約を原則とする旨の規定を新設・方式の自由の原則を明文化

改正点:

  • 522条1項に,諾成契約を原則とする旨の規定を新設
  • 522条2項に,方式の自由の原則を明文化する規定を新設

【現】

規定なし

(現522条は「承諾の通知の延着」について規定)

【新】

(契約の成立と方式)

第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

【関連情報】

現522条は削除された。

【債権法改正メモ】契約の締結及び内容の自由を明文化

改正点:

契約の締結及び内容の自由を明文化する規定を521条に新設

【現】

規定なし

(現521条は承諾期間の定めのある申込みについて規定)

【新】

(契約の締結及び内容の自由)

第五百二十一条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。

2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

【関連情報】

現521条は,新523条に移動

【債権法改正メモ】521条の改正

改正点:

  • (現)521条に規定されていた内容が(改)523条に規定された。
  • (現)521条1項の文言が一部修正された。
  • (改)523条1項ただし書が追加された。

【現】

(承諾の期間の定めのある申込み)

第五百二十一条 承諾の期間を定めてした契約の申込みは、撤回することができない。

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

【新】

(承諾の期間の定めのある申込み)

第五百二十三条 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない

2 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

【債権法改正メモ】120条1項・2項の改正

改正点:

  • 120条1項;取消権者に,他の制限行為能力者の法定代理人として制限行為能力者が行為した場合には,当該他の制限行為能力者が含まれる旨が括弧書きで挿入された。
  • 120条2項;取り消すことができる行為に錯誤が追加された。

【現】

(取消権者)

第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

【新】

(取消権者)

第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

【関連情報】

95条が改正され,錯誤が取り消すことができる行為とされている。