【債権法改正メモ】93条1項の改正・93条2項の新設

改正点:

● 旧93条ただし書の「相手方が表意者の真意を知り」が「相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを」に改められ,93条1項とされた。

● 93条2項が新設され,心裡留保を理由とする意思表示の無効を善意の第三者に対抗することができない,とされた。

【現】

(心裡留保)

第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

【新】

(心裡留保)

第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

【附則(平成二九年六月二日法律第四四号)】

(意思表示に関する経過措置)
第六条 施行日前にされた意思表示については、新法第九十三条、第九十五条、第九十六条第二項及び第三項並びに第九十八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 施行日前に通知が発せられた意思表示については、新法第九十七条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

【債権法改正メモ】90条の文言一部削除

【改正点】

90条に基づき無効とされる法律行為について,旧法では「…事項を目的とする法律行為」とされていた部分を「…法律行為」に修正

【現】

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

【新】

(公序良俗)

第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

【附則(平成二九年六月二日法律第四四号)】

(公序良俗に関する経過措置)
第五条 施行日前にされた法律行為については、新法第九十条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

【債権法改正メモ】86条3項の削除

【改正点】

86条3項(「無記名債権は,動産とみなす」と規定)が,削除された。

【現】

(不動産及び動産)

第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。

2 不動産以外の物は、すべて動産とする。

3 無記名債権は、動産とみなす。

【新】

(不動産及び動産)

第八十六条 土地及びその定着物は、不動産とする。

2 不動産以外の物は、すべて動産とする。

3 (削除)

【附則(平成二九年六月二日法律第四四号)】

(無記名債権に関する経過措置)
第四条 施行日前に生じたこの法律による改正前の民法(以下「旧法」という。)第八十六条第三項に規定する無記名債権(その原因である法律行為が施行日前にされたものを含む。)については、なお従前の例による。

【債権法改正メモ】20条1項に制限行為能力者の定義を挿入

【改正点】

20条1項に括弧書きで制限行為能力者の定義が挿入された。

【現】

(制限行為能力者の相手方の催告権)

第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

3 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

【新】

第二十条 制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

3 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

4 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

【債権法改正メモ】3条の2の新設

【改正点】

意思能力を有しない法律行為は無効とする旨の規定を新設

【現】

規定なし

【新】

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

【附則(平成二九年六月二日法律第四四号)】

(意思能力に関する経過措置)
第二条 この法律による改正後の民法(以下「新法」という。)第三条の二の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前にされた意思表示については、適用しない。

【関連情報】

「第2章 人」に「第2節 意思能力」が新設され,本条が置かれた。これにより,行為能力(第3節)・住所(第4節)・不在者の財産管理及び失踪の宣告(第5節),同時死亡の推定(第6節)の節番号が1つ繰り下がった。