改正点:
受取証書の持参人に対する弁済に関する規定の削除
【現】
(受取証書の持参人に対する弁済)
第四百八十条 受取証書の持参人は、弁済を受領する権限があるものとみなす。ただし、弁済をした者がその権限がないことを知っていたとき、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
【新】
削除
【改正理由】
審議会の資料では以下のように説明されている1。
民法第480条は,受取証書の持参人であれば債権者から受領権限を与えられているのが通常であるとして,受取証書の持参人に対して弁済した者を特に保護する趣旨 から,同法第478条とは異なり,受取証書の持参人に対する弁済の効力を否定する側に,弁済者の主観的要件の主張・立証責任を課している。
しかし,このような民法第480条の趣旨に対しては,①受領権限の証明方法として重要なものは,受取証書の持参以外にもあり,受取証書の持参についてのみ特別な 規定を設ける必要性が低いと考えられること,②同条が適用されるには,真正の受取 証書の持参人であることを弁済者が立証する必要がある(後記判例参照)と考えられるところ,真正の受取証書の持参人に対する弁済であることが立証されたのであれば, 弁済者の善意無過失を事実上推定してよいと考えられることから,同法第478条が 適用される場合と本質的な相違はないこと等の指摘があり,これらを理由として,同法第480条の存在意義を疑問視する見解が主張されている。また,判例(大判明治 41年1月23日新聞479号8頁)によると,同条は真正の受取証書の持参人につ いてのみ適用され,偽造の受取証書の持参人については,同法第478条が適用され るところ,受取証書が真正か偽造かによって適用される条文が異なるのは分かりにくいという指摘もされている。
以上のような指摘を踏まえ,本文では,民法第480条を削除し,受取証書の持参人に対する弁済についても同法第478条の適用に委ねることを提案している。