(注記)ここでは平成32年4月1日施行予定の民法の規定を前提に説明しています。それ以前の規定は(旧)をつけて区別しています。
今回のテーマ
;1つの条文に原則と例外が書かれている場合の条文の読み方
今回は、条文の読み方(基本編)の2回目です。今回のテーマは「1つの条文に原則と例外が書かれている場合の条文の読み方」です。
読み方の学習用の素材にするのは、民法5条1項です。まずは、条文を確認しておきましょう。
(民法5条1項)
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
条文の読み方の基本ルール
民法5条1項は2つの文章で構成されています。
他の条文にも同じような構成(構造)のものが多くあります。
条文の「ただし」の前の一文のことを「本文」といいます。民法5条1項の「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」という部分は、「民法5条1項本文」といいます。
「ただし」以下の一文は、「ただし書」といいます。民法5条1項の「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」という部分は「民法5条1項ただし書」といいます。
本文とただし書の関係
各条文の「本文」は、原則を規定するものです。民法5条1項本文は「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と規定しています。
なお、「法律行為」について詳しくは民法総則の授業で勉強してください。今のところは「契約を締結したりすること」と認識しておいてくれれば大丈夫です。また「法定代理人」の典型例は「親」です(詳しくは家族法の授業で勉強してください)。
民法5条1項本文は、「未成年者が法律行為をする場合」に関する原則を定めるものです。その原則とは、「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない」というものです。
(重要ポイント①)
各条文の「本文」は原則を定めるものである。
次に、「ただし書」について説明します。「ただし書」は、条文の本文が定めていることの例外を規定するものです。
民法5条1項ただし書は、「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」と規定しています。「この限りでない」とは、その条文の本文が規定している原則を適用しないという意味です。
(重要ポイント②)
ただし書の「この限りでない」とは、その条文の本文が規定している原則を適用しないという意味である。
民法5条1項の場合でいえば、
原則;未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
例外;単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、その法定代理人の同意を得なくてよい。
・・・このように規定されています。
つまり民法5条1項は、「未成年者が法律行為を行う場合」を①単に権利を得、又は義務を免れる法律行為を行う場合と②①以外とに分類し、①については例外的に法定代理人の同意を不要とした規定だといえます。
このように、ただし書は、本文で規定していることの例外を定めています。
(重要ポイント③)
ただし書は、本文で規定していることの例外を定めるものである。