1 どのような場面で適用されるか?
まず、どのような場面で適用される法律なのか、Aさんの1週間を例にみてみましょう。
【Aさんの1週間】
- ドラッグストアでマスクを買った。
- マスクがなくて困っている友人Bにマスクを5枚あげた。
- 友人Cから本を借りた。
- 車で出かけなければならないので賃料1万円を払ってD社からレンタカーを借りた。
- 弟Eに1万円を貸した。
- 隣人のFさんのところで家庭教師のアルバイトをしてアルバイト代として4000円をFさんからもらった。
- Gからプロポーズの返事をもらったのでGと婚姻することにし、婚姻届を豊平区役所に提出した。
最後の事例以外は、皆さんも類似した経験をしたことがあると思いますし、割と身近な事例だと思います。実は、これらの事例全てが民法の適用対象です。
2 どのようなことが規定されているか
民法には、多くの規定があります(条文数は1000以上です)。細かい内容は、これから徐々に学習していくことにして、以下ではこれからの学習のために知っておくべきいくつかも項目について説明します。
【何について規定しているか】
民法は以下の3つの事項を規律する法律です。
1)「人」と「人」との間の権利・義務関係を規律する。
2)「人」と「人」との間の親族関係を規律する。
3)「人」と「人」との間の相続関係を規律する。
【民法上の権利】
(Case1)
2020年4月1日、AはBとの間で「B所有のiPadをAがBから2万円で購入する」という契約を結んだ(契約を締結した)。
「購入する」と書いてありますから、AとBとが締結した契約が売買契約だということは分かると思います。
この契約を締結したことによって、AはBに対して「iPadをAに引き渡せ」という権利を有することになります。また、BはAに対して「代金2万円を払え」という権利を有します。
これらの権利を抽象化すると、「人(AやB)が、自分以外の人に対して、一定の行為(「iPadをAに引き渡せ」、「代金2万円を払え」)を請求する権利」と表現することができます。このような権利のことを「債権」といいます。
次に、AやBとiPadについてみてみましょう。(Case1)には、「B所有のiPad」という表現が出てきました。iPadがBの所有物である場合、BはそのiPadについて「所有権」という権利を有しています。
所有権のように、人が物について有している権利のことを「物権」といいます。
民法上の権利は、「物権」と「債権」に大別されています。
(定義)
物権:人が物について有している権利
債権:人が人に対して一定の行為を請求できる権利
※このように定義されても、今の時点ではどのような権利なのか具体的にイメージするのが難しいと思います。さしあたり、①民法上の権利は、物権と債権に大別されている、②物権の定義は「人が物について有している権利」であり、③債権の定義は「人が人に対して一定の行為を請求できる権利」である、これらの3点を覚えておいてください。
3 どのような編成になっているか
2で、民法は、「人」と「人」との間の権利・義務関係・「人」と「人」との間の親族関係・「人」と「人」との間の相続関係を規律する法律であると書きました。
また、民法上の権利は物権と債権に大別されていると説明しました。民法は、これらをそれぞれの編に分けて規定し、民法の適用対象全体に共通するルールをまとめて第1編に総則として規定しています。つまり、民法は、第1編総則・第2編物権・第3編債権・第4編親族・第5編相続の5編で編成されています。
※赤字で書かれている4つの各項目を1つの編とし、全体に共通するルールを冒頭に「総則」としてまとめて5編としています。